業務実績

平成20年度 「‘国境のまち’再生/与那国島の国境交流推進事業」

全体構想と本年度事業のねらい

与那国島は、八重山圏の中心である石垣市(127km)よりも台湾に近い(111km)。しかし、国境の離島であるがゆえ、 恒常的な人口減少、物価高、医療、教育、その他さまざまな面での‘離島苦’に今も直面している。 本事業では、台湾以西のアジア地域に最も近接する立地条件を‘地の利’とし、姉妹都市・花蓮市との「国境交流」を 軸に、新たな観光・特産品の振興、新しい生活交流圏の創出を支える交通手段の確保にチャレンジ。島一丸の事業 推進を通じ、戦前~終戦直後、アジアの玄関として栄えた‘国境のまち’与那国の元気と活力を再生する。 立地特性を活かした新たな交流は、一島一町としての自立・自治を選択した与那国自立戦略の柱。本年度事業では 「特産品」「地域交通」「観光振興」の3つを中心に‘複合社会実験’等の交流事業を実施する。さらに、島の活性化と 再生を牽引する「国境交流のソフト/インフラ」等基礎条件の整備をめざし、次代に繋いでいくこととする。

推進体制

「国境交流推進協議会」(計22名/うち6名は台湾側委員)および「国境交流推進特命事務局」を設置。 また、‘3つの取組み’に対応する「ワーキング部会」(特産品部会、チャーター便部会、観光部会)を編成。さらに東京・ 那覇・台北など島外専門機関等との協働体制を敷き、多様な機関・関係者が連携する実践的推進体制を編成。

取組みの内容 (三位一体の取組み)

1.与那国特産品の国際的振興

特産品の販促・PR・地域ブランド化等を目標に、新しい人的ネットワークの構築など現場主体の取組みを重ねる。 特に、チャーター便来航時には、台湾観光客・バイヤーをターゲットとする 『国境の島・与那国特産品フェア』を三週にわたって開催。

開催日
3月1日、3月8日、3月15日
内容
国内外の旅行客に対し‘オール与那国’方式で島の特産品を披露。
国境交流を機に特産品全体のPR、新たな顧客創出、販路拡大等を図る初の試み。
2000数百万の台湾市場に、手づくりのイベントを通じて情報を発信。

花蓮側からは、「花蓮縣与那国交流発展協会」で与那国特産品の 展示・PRを行いたい旨のオファー。(新たな海外市場開拓の足がかり)

社会実験「チャーター便直航事業」等による花蓮⇔与那国間の直接往来促進 (海路+空路)

社会実験「チャーター便直航事業」等による花蓮⇔与那国間の直接往来促進 (海路+空路)

チャーター船プロジェクト

当該国際航路(約60海里)の航行+与那国島に入港可能な船舶の調達、関係当局(海事関係,CIQ等)との事前 の協議・調整、傭船契約等に関する実務作業を集中的に実施。 1月9日、3m超の波高を伴う天候不良を受け、回復が予想される12日(三日後)への順延、また、同日航海不可能 の場合は船舶による事業断念を全会一致で決定。1月10日、安全な航行は困難と判断し、本年度事業での海路 =船舶によるチャーター便事業の中止を決定。 ※傭船名:「海洋拉拉号」(台湾「華達国際海運」所有/高速旅客船)

チャーター航空機プロジェクト

台湾・復興航空(ATR72型/最大搭乗人数70名)の機材を使用し、2月下旬より三週にわたり、合計6往復の社会 実験「花蓮-与那国間直航チャーター便就航事業」を遂行。併せて、日中両文によるアンケート(社会実験調査票) を実施。

空路=チャーター航空機での直航を通じ、「交流」の基礎条件となる「交通」を確保するとともに、国境地域間における 約280名の「人の移動」を計画的に遂行。本年度の‘複合社会実験’を成功に導く。 海路=チャーター船では、これまで前例のなかった台湾船籍の高速旅客船の就航可能性を追求し、「不開港場寄港 特許」(沖縄総合事務局)、「臨時出入港指定」(福岡入国管理局)等を獲得。船舶の航行に係る制度的要件等を 事業の現場でクリアし、今後の事業展開に繋がる貴重な資産となった。

今後の重要課題として明確となったのは、目的や季節等に応じた「海路」と「空路」の有効な組合せと総合的な推進。 その意味では、今回実行した計画的・集中的な航空機の往来は、本町がめざす‘国境を結ぶ’チャーター便の持続的・ 定期的な運航の実現に向け、かけがえのない事業実績となった。

国内外をターゲットとする新たな与那国観光の振興

過去経験のない数の台湾観光客の来訪を前提に、島内すべての 関係者に参加を呼びかけ、「受入調整会議」等を集中的に実施。 地道な協議・調整を重ね、外客受入れの実践態勢、人的な連携 ネットワークが整う。

(→全体運営,宿泊,飲食,観光体験,特産品,交通,出入国,VIP対応,危機管理等、綿密なプログラムを構築。) 各種「体験プログラム」など手づくりのサービスとホスピタリティを通じて 台湾観光客の満足も随所で獲得。現場主体の体制づくりと新たな 観光振興プログラムの両面で貴重な成果を上げる。

広報・PRでは、BS12『Local Cool Japan』の現地ロケ+オンエア、Web広報等、メディアミックスによる地域情報 を発信。また、日中両言語による新たな観光Webサイト・現地案内データ等を制作。「台北国際旅行博」では中国語 版観光パンフ4,000部を配布。パートナーの花蓮側からは、花蓮-与那国『共同観光圏』推進計画の提案がなされた。

持続可能な発展的交流に向けて (次年度以降の展開等)

次年度以降は、

  1. 与那国-花蓮間の直接航行の本格化(定期運航化)
  2. 国境の島YONAGUNIを中継地とする 新たな観光・交易の促進
  3. 国境地域の発展を担う次世代の人材育成と地域間協力の推進

を柱(目標)とする 事業・プロジェクトを推進する。特に高校のない島の現状にも鑑み、小中学生を主体とする姉妹都市間のスポーツ交流、 教育・文化交流など、国境離島・地域の発展を担う次代の人材育成を促進したい。

与那国町における国境交流推進の背景には、地域社会の存続すら危ぶまれる厳しい現実がある。 一過性ではない「持続的な交流」を念頭に、交流パートナーとの信頼関係を基盤とし、社会的・制度的環境の違い等 も十分認識しながら、信頼と検証を基本とする交流関係を構築していくことが今後の重要課題である。さらに、アジアの 新時代に寄与する‘次代の人材育成’の共同事業化等を通じ、より発展的な交流と関係強化をめざす。

「国境の島」の存続と活性化は、国土・海域の保全、アジアとの共生、外交・安全保障等、日本の国益にとっても重大 な課題である。新たな支援策の導入を含め、さらなる取組みの強化と当該事業の発展的推進が強く求められる。

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